九州大学LGBTsサポートガイド

2020.7.6

人間の性のあり方は多様です。九州大学では、性を理由に差別されたり、不利益を被ったりすることがないよう基本方針を定め、サポートを行なっています。このガイドは、LGBTsの学生や、それらの人たちを支える学生・教職員に向けて、基本知識や学内のサポート状況、相談窓口などを記しています。pdf版は、こちらからダウンロードできます。

九州大学では、明治44年の創設以来、創造性と多様性を尊重し、自由闊達な学風に基づく知の探求を推進してきました。責任と成果を分かち合う活力に満ちた大学をめざし、様々な個性を持つ学生及び教職員すべてが尊重され、誰もが自分らしく過ごせるキャンパスを実現するための基本方針を以下のように掲げます。

人間の性は多様であることを理解し、性的指向や性自認に関する
(1)差別やハラスメントを禁止します。
(2)自己決定を尊重します。
(3)修学・服務の妨げを取り除きます。
(4)学生及び教職員への理解を促進します。

基本知識

LGBTs

LGBTは、Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)、Gay(ゲイ:男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル:恋愛や性愛の対象が男性でも女性でもありうる人)、Transgender(トランスジェンダー*:身体的な性別と自分が認識する性別が同じでない人)の頭文字をとった、セクシュアル・マイノリティの総称のひとつです。

セクシュアル・マイノリティには、他にも、Intersex(インターセックス/; 性分化疾患:身体的に男女の性別に分けることができない人)や、LGBTという4つのカテゴリーに振り分けられない人も多くいるため、最後に「s」を加えて、LGBTsと呼ばれることが増えてきました。

*トランスジェンダーは、「性同一性障害」や「性別違和」と言われることもありますが、世界保健機関(WHO)は「精神及び行動の障害」ではなく「性の健康に関連する状態」の一つと認定しています。

性的指向と性自認

性的指向は、恋愛や性愛の対象がどの性に向いているかを、性自認は、自分が認識している自分の性別を指します。LGBTsに関して言えば、性的指向は主にLGBに関すること、性自認は主にTに関することと言えます。しかし、性的指向や性自認は、LGBTsに限らず、他のあらゆる人にも関わることです。   性的指向や性自認は、先天的なものと後天的なものが複雑にかけ合わさって決まります。人間の性が本来的に多様であることに由来するもので、人権として尊重されるべきものです。

カミングアウトの難しさ

LGBTsの人たちにとって、自らがLGBTsであるとカミングアウト(公言)するのは容易なことではありません。カミングアウトは、人間関係や社会的立場を一変させる可能性のあるものだからです。当事者は、生まれた時から自分がLGBTsと認知しているわけではなく、日頃の違和感が積み重なって自分自身をそのような存在として受け入れるため、カミングアウトは重大な決断となります。一方、カミングアウトをされる側にとっても、それは重大な出来事かもしれません。性に対する価値観は多様であるため、すんなり受け入れることができる人もいれば、そうでない人もいるからです。

カミングアウトをする際には


カミングアウトにはさ様々なリスクが伴います。カミングアウトすべきかどうか迷っている時、そもそも自分はLGBTsかどうかわからない時には、複数の信頼のおける専門家や支援機関などにアドバイスを求めることを推奨します(裏表紙に相談窓口を記載)。カミングアウトに関する書籍を読んでみるのも有益です。カミングアウトをする際には、信頼のおける周囲の人から少しずつ、自分に合ったペースで行うのがよいと言われています。 

カミングアウトされたら

落ち着いて、じっくり相手の話を聞くことが大切です。無理にわかったふりをせず、ゆっくり考えさせて欲しいと言ったり、必要な説明を求めたりすることも大切です。ただし、相手がカミングアウトしたことを尊重しない言動は控えるようにしましょう。

アウティング

カミングアウトされたことやその内容を本人の意に反して第三者に伝えることを、アウティングといいます。カミングアウトされると、聞かされた側もどう受け止めていいかわからなくなり、他の誰かに話したくなることがあります。しかし、アウティングは当事者に多大な精神的苦痛を与えるものです。自分ひとりで抱えきれなくなった場合は、カミングアウトした本人に誰と話をしたらよいかを尋ねるか、専門家に相談するようにしてください。

九州大学でのサポート

氏名と性別の情報とその取り扱い
①通称名の使用

本学における学生の氏名は、学籍簿上の表記に基づき学内で取り扱われ、学籍簿上の表記は本名(戸籍上の氏名)を原則とします。自認する性に基づく通称名の使用を希望する場合は、所定の手続きの上で使用することができますので、相談窓口にご相談ください。

②名簿における性別の記載

不特定多数の学生や教職員に公表される名簿等については、原則として性別欄を削除するよう全学的に周知・徹底を図っています。性別も要配慮個人情報(独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律)の一要素になり得ることから、当事者の意図しない形で本人の性別情報が公表されることのないよう留意しています。

③書類や証明書等に関する性別情報の取り扱い

現在の書類や証明書等での性別の記載は、下記のようになっています。性別記載のある書類において、自認する性に基づく性別の使用を希望する場合は、相談窓口にご相談ください。可能な範囲での対応を検討しますが、希望に添えないこともありますのであらかじめご了承ください。今後、各書類での性別の記載が必要かどうかを検討し、改善していきます。

■大学に提出する主な書類等の性別記載

<性別記載のないもの>
入学料・授業料免除申請書、合宿・遠征届、バイク入構届

<性別記載のあるもの>
 学籍カード、就職等相談申込票、九大履歴書(就職活動用)、通学証明書(定期券申込書)、伊都キャンパス学生寄宿舎入居申請書、公認団体部員名簿

■大学が発行する主な証明書等の性別記載

<性別記載のないもの>

学生証、在学証明書、成績証明書、卒業(修了)見込証明書、学位記、学割証

<性別記載のあるもの>

健康診断証明書

施設の整備状況

①多目的トイレ(だれでもトイレ)

本学には、誰でも使用できる多目的トイレが設置されています。学内の多目的トイレの場所は、九州大学のホームページで確認できます。

URL:http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/campus  

②更衣室・ロッカー 施設、設備の状況により必ずしも希望に沿えるとは限りませんが、可能な範囲で個別対応しますので、事前にご相談ください。

在学中のサポート体制

本学では、学生生活のさまざまな場面において性的指向や性自認等に配慮し、個人の能力が存分に発揮できる教育環境の整備に取り組むとともに、理解を深めるための啓発活動を積極的に実施しています。以下に記すこと等で相談がある場合は、相談窓口にご相談ください。  

①授業:更衣室の使用、宿泊を伴う学外実習、グループ分けなど。

②就職活動:インターンシップや、就職活動時、就職後の不安、キャリアに関わる相談など。

③留学プログラム:留学プログラムでの配慮など。(本件については、国際部留学課国際学生交流係、各留学プログラム担当にご相談ください。) 

④学生生活:学生寄宿舎、課外活動、サークル、入学式・学位記授与式等の式典での身なりなど。 

⑤健康診断:可能な範囲で個別対応しますので、事前にご相談

学外の相談窓口

大学外でも、LGBTsの専門家や自助グループなどが相談や支援を行なっています。ただし、望むようなサポートが受けられるかどうかはわかりません。複数の機関をあたって、自分に合ったサポートを見つけるようにしてください。

■公的機関

□福岡県弁護士会 LGBT無料電話法律相談(毎月第2木曜日・第4土曜日 12:00~16:00) Tel:070-7655-1698

□みんなの人権110番(法務省 福岡法務局)(月~金曜日 8:30~17:15) Tel:0570-003-110

□福岡市人権啓発センター(ココロンセンター)(月~金曜日(祝日・休館日除く。10:00~12:00, 13:00~17:00) Tel:092-717-1247(人権啓発相談室)

■NPO等の支援機関)

福岡には、LGBTs等を支援するNPOや自助グループが複数あります。ウェブサイトで検索をすると見つかるので、自分のニーズに合いそうなところを探してみてください。ただし、すぐに自分が望むサポートを受けることができるとは限りません。複数の機関に問い合わせを行い、自分に合うところを見つけてください。

[参考]書籍、ウェブ情報 LGBTsに関する優良書籍は数多く出版されています。また、ウェブサイト等でも、有益な情報を見つけることは可能です。ただし、不正確な情報も少なくないので、発信者の信頼性を確認し、複数の情報を比較するよう努めてください。

学内の相談窓口

本学では、LGBTsに関する相談窓口を以下のとおり設置しています。必ずしも希望に添えない場合もありますが、まずはお気軽にご相談ください。相談内容によっては、必要に応じて他の相談窓口と連携して対応します。その際にも、プライバシーは守られますので、安心してご相談ください。

■何でも相談窓口

□伊都地区センターゾーン(学務部学生支援課内)Tel:092-802-5915
□伊都地区ウエストゾーン(工学部等教務課内)Tel:092-802-3892
□病院地区(医系学部等学務課内)Tel:092-642-6532
□大橋地区(芸術工学部学務課内)Tel:092-553-4586 □筑紫地区(筑紫地区教務課内)Tel:092-583-7513

■キャンパスライフ・健康支援センター

□伊都地区センターゾーン Tel:092-802-5881(ビッグさんど2階)
・健康相談室(健康相談、定期健康診断、応急処置など)
・学生相談室(カウンセリング、履修や修学相談など)
・コーディネート室(どこに相談したら良いか分からない場合、保護者からの相談など) E-mail:kucr@chc.kyushu-u.ac.jp

・インクルージョン支援推進室(障害のある学生のための修学支援、合理的配慮など) Tel:092-802-5859(センター1号館1階)
E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp

□伊都地区ウエストゾーン分室 Tel:092-802-3297
□大橋分室 Tel:092-553-4581
□病院分室 Tel:092-642-6889
□筑紫分室 Tel:092-583-8431

■各部局(学部・大学院など)学生担当窓口(担当係)

URL:http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/contact/student_section/

■ハラスメント相談室(各地区ハラスメント相談員)

Tel:092-802-6091(センター6号館2階)E-mail:syjsoudan@jimu.kyushu-u.ac.jp

九州大学LGBTsサポートガイド 発行日:2020年6月1日
制作:九州大学学務部学生支援課、九州大学キャンパスライフ・健康支援センター、九州大学大学院芸術工学研究院
協力:藤岡行政書士法務事務所
*本サポートガイドは、非営利目的に限り、出典を明記することを条件に利用(転載、コピー、共有等)を許可します。 ©︎ 2020 九州大学