未来構想デザイングレート・ブックス03

2020.4.17

3回目は、伊藤先生からの紹介です。

シュレーディンガー『生命とは何か: 物理的にみた生細胞』 岡小天、鎮目恭夫訳、岩波文庫、2008年

20世紀前半は現代からみればほとんどの生命現象は未解明であった。量子力学とよばれる物理の一分野で大きな貢献をしたシュレディンガーは、当時茫洋としていた細胞にまつわる知見をまとめて、科学としてどのようにとらえるべきかについて講演を行い、本書を著した。現代生物学の目からみればいずれもその指摘は正しく、また単に正しいだけではなくて本質的なもののように思える。「未来構想」のような新しい分野を考えるときに、どのような態度で未解明の事象に対峙していくべきなのかが参考になると思う。

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ソーカル、ブリクモン『「知」の欺瞞: ポストモダン思想における科学の濫用』 田崎晴明, 大野克嗣 , 堀茂樹訳、岩波現代文庫、2012年

ソーカルという物理学者が現代思想の学術誌に論文を掲載した。後に本文中の数式および科学用語はでたらめなものであると明かし、そのような論文が流通されうる社会科学のあり方に対して問題を提起した。科学とはなにか、科学を使ってどのように「未来を構想」できるのかを考える上でふまえておくべき事件のように思う。

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ワッツ『偶然の科学』 青木創訳、ハヤカワ文庫、2014年

「ソニーはなぜ動画や音楽の規格競争で負けたのか」「なぜモナリザは名画なのか」「なぜアップルは復活を遂げたのか」こうした世間で起こるさまざまな事象に対して、各分野の専門家が理由を与える。しかしそれは面白いストーリーではあるかもしれないが、実は偶然であるという方が科学としては誠実な回答かもしれない。

理論物理から社会学に転身した著者が、科学の目で社会に切り込む。

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