谷 正和

2020.9.23

TANI Masakazu

環境人類学、
文化人類学

— 今まで行ったことのない所に行って、会ったことのない人と話をしたり、見たことがないものに出会ってください。

主な研究テーマは環境問題の社会文化的研究であり、環境人類学の視点から、環境問題を社会文化的な構造、特に環境問題と貧困の関係に着目している。主なフィールドはバングラデシュ、ネパールなどの南アジアであり、これまで研究対象としたのは、ガンジス川流域の地下水ヒ素汚染とバングラデシュ東南部の森林消失問題である。地下水ヒ素汚染問題は自然源のヒ素によって井戸水が汚染され、継続的に飲料水として利用することによって、慢性砒素中毒が発生する問題である。自然源の汚染であるので、どの井戸が汚染されているかは人間の属性とはかかわりがないはずにもかかわらず、貧困層に被害が拡大している状況が明らかになった。バングラデシュと南部のテクナフ半島では保全林指定されている地域で森林消失が続いており、その原因の一つは住民が薪を違法に採取、販売していることにある。これら住民の多くは貧困層であり、この環境破壊的な行動は法律や生態系にかんする無知ではなく、貧困ゆえに他に生計の手段がないことで発生していることが明らかとなった。この他、旧英領期の建築の価値づけを目的として、使用されている鉄骨の形態的属性から建物の編年をする「鉄骨考古学」プロジェクトにも従事している。


環境問題、南アジア、ポリティカル・エコロジー