伊藤 浩史

2020.9.23

Hiroshi Ito

時間生物学 非線形動力学

— 生きているものと生きていないものの違いに思い悩む高校時代でした。大学に入学し体内時計の研究に出会い、私の人生の解くべき問いになりました。大学で人生を賭けられるような問いが見つかると素敵ですね。

 24時間周期で繰り返される生命現象は概日リズムと呼ばれています。概日リズムのメカニズムに関して生理学的および数理的な観点から研究をすすめています。特に私たちのグループでは概日リズムをもつ生物の中でもっとも単純な生物であり研究が進んでいるシアノバクテリアに着目しています。
 最近おこなった研究として、低温下でシアノバクテリアの概日リズムが消失することを見つけました。一方で非線形動力学の分岐理論によれば、リズム消失は振幅の低減(Hopf分岐)か周期の延長(Saddle-node分岐)のどちらかによるものです。さまざまな温度において、バクテリアの概日時計本体であるKaiCリン酸化リズムを観察することで低温下のリズム消失は振幅減少によるものであることを示しました。また理論から予言されるとおり、低温下の概日リズムは減衰振動へと変化すること、また適切な外力によって共鳴をすることを示しました。
 このように生物学の手法を用いてリズムを観察すること、物理学の手法をもちいてリズムの背後にある数理的構造を見極めることに取り組んでいます。


研究室ホームページ:http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~hito/

体内時計、生物リズム、生物のデザイン原理