【開催報告】公開講座「高校生のための未来構想デザイン講座(演習編)」

2022.9.2

2022年8月27日(土)に「高校生のための未来構想デザイン講座(演習編)」が対面形式で実施されました。芸術工学部未来構想デザインコースの概要説明、中村先生による日本画を通して学ぶ「線」についての講義、そして講義の内容を踏まえたデッサンの演習を行いました。当講座には九州地方以外の地域からの参加者を含め、未来構想デザインに関心のある高校生12名が参加しました。ここではその様子をレポートします。

■未来構想デザインコース概要

まず、コース長の尾方義人先生(専門:インダストリアルデザイン、デザイン学)から未来構想デザインコースの概要について説明がありました。未来構想デザインコースは「何をデザインするか」を考えるコースだと話します。

 未来構想デザインコースでははっきりとしたデザイン対象があるわけではなく、今までに目が向けられなかったり、多分野が重なり合う必要があったりする問題に注目して解決する方法を考えていくと言います。最後に尾方先生は「未来構想デザインコースには今までになかったものを作りたいという人に来てもらえたら」というように話しました。

■「線を引く」という観点から

 次に、中村恭子先生(専門:日本画、藝術基礎論)による模擬授業が行われました。様々な日本画を例に見ながら「線を引く」ということについて考え、その後線を意識しながら実際にデッサンをするという内容でした。

 中村先生は、日本画は線を引く技術が肝となると話します。実際に鈴木其一《貝図》の貝の幾何学的ながらも柔和さも感じる線、竹内栖鳳《班猫》の弾力のあるひげとふわふわとした毛の描かれ方の違いなど、線ひとつ取っても様々な工夫があるとわかりました。ただ、どの絵・線においても重要なのが写実的に物体を再現しているのではなく、描いたその人がどう感じたかという個別のリアリティを描いていることだと言います。

 個別のリアリティを描くために、中村先生は形の息づかいを意識することが大切だとしました。速水御舟《寒牡丹写生図巻》の花が開く様子を線で表現しているのを例に、物体の意志の高まりを、線を描く際の息づかいで表現すると良いと言います。また、全体像を捉えてバランスの良い形を書くより、部分的に見てその部分がどのような意志の高まりを持っているかに着目し描くことも大事だとしました。

 その後、講義にあった「線を引くこと」について意識しながらデッサンを行いました。各自キャンパス内で葉や枝などの描きたいモチーフを見つけ、中村先生にアドバイスを頂きながら描きました。そして完成した作品を鑑賞し、中村先生からご講評頂きました。

 講義に関して長津結一郎先生(専門:アートマネジメント)はご自身の専門と絡めながら「個別のリアリティを表現するためによく観察することは、何か問題を解決する上で自分との関係を捉えて自分ごとのように考えることに通じている」と話されました。また、尾方先生は「観察して新しい気づきがあるとそれを表現したくなる、という体験ができたのでは」とコメントされました

 最後に、入試情報や、質疑応答が活発に行われました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

レポート:波田光咲(未来構想デザインコース2年)
写真:山口瑛斗(未来構想デザインコース3年)