普段何気なく見ている色彩世界ですが、色は物理特性とは無関係で他者と感覚が同じであるかを証明することが困難な主観的感覚を個人にもたらします。色は、光の波長情報がたった数種類の生体センサーで捉えられ、脳での情報処理を経てカラフルな脳内表現に変換されることから、創造的な感覚であるともいえます。
主観的感覚であるがために、色覚に多様性があることが学術的に記述され始めたのは18世紀末のことですが、多数派の色覚とは異なる少数派の色覚は、最近まで色覚異常として分類されてきました。しかし、詳しく調べると、ヒトの色覚には正常/異常に分けられない連続的な多様性があることが明らかになってきています。センサーの多様性と、脳での情報処理の自由度が合わさることで、連続的かつ多元的な多様性がつくられると考えられます。
私達の研究室では、生物学、心理学、情報学、社会学等の方法論を取り入れながら、色覚の共通原理と多様性に焦点を当てた研究を行っています。多様な主観的感覚を持つ人々の間でコミュニケーションを可能とするヒトの特性を理解することで、ヒトの多様な性質を活かした社会の仕組づくりに貢献する研究を目指しています。
教員